で、仕事しているふりをしながらネットを眺めていると、10月からの新番組に、こんなものが。
好好!キョンシーガール〜東京電視台戦記〜(テレビ東京系)
「女優にアイドル、大学生としても忙しい川島海荷(18)。
なんでも鑑定団の出演依頼を受けて、自宅の蔵を物色していると、「封印」と書かれた奇妙な鍋を見つける。
誤って蓋を開けてしまうと、中から101匹の凶悪なキョンシーたちが解き放たれてしまった。
すると、お札は少年に変身し、呆然とする海荷に対して、「責任をとって道士としてキョンシーと戦え」と告げる。
かたくなに拒む海荷だったが、自身が所属する9nineのファンがキョンシーの被害にあったことを知る…」(公式HPより)
ということで、キョンシーブーム再来?なんでしょうか。とりあえず、ヒロインの名前の読みがわからんとか、キョンシーは鍋に封印するものじゃないとか、101匹はワンちゃんじゃないのかとか思いつつ、ふと、なにか忘れていたことが……あっ。
というわけで、数か月の時を超えて、「カルチャーカフェ・獨協「ホントにあった?中国のコワい話」第4回「キョンシーは実在するか?〜中国の死体搬送術〜」ここに見参!!
(余談ですが、MSIMEは「見参」変換できず、あやうく「ここに剣山!!」にするところだった)
さて、前回とか前々回とかその前とか、遠い遠い記憶のかなたのお話では、中国では幽霊が人に悪さをするだけでなく、死体もときには「殭屍(キョンシー)」となり、人を襲ったり、人を迷わせたりするということでした。
死んでいるのに動き回る、中国版ゾンビ「殭屍」。欧米のゾンビは、映画の中では放射線とかウィルスなどが原因で、死体が動き回って生者を追い回すというのが主流のようです。ただ聞くところによれば、「ゾンビ」というのは、ハイチなどの地域で、誘拐してきた人を薬などで一種の催眠状態のようにして、反抗することのない労働力として使っていた、というのが起源だそうです(ほんとかどうかはわかりません)。
一方、われらが「殭屍」は、これまでご紹介した話では、たまたま生者の陽の気に触れた亡骸が、陽の気を吸い込まんとして生者を追いかける、というものが主流でした。ところが、近世には、術を使って遺骸を「殭屍」にする人々がいたそうなのです。
中国の南方、貴州や雲南などの山岳地帯は森林資源が豊かなので、春になって川が増水すると、上流の村では木を切り出していかだを組み、それを川に浮かべて下流の町まで運びます。町についたらいかだをばらして材木として売り払い、今度は徒歩で上流の村に戻っていきます。そのような商売が盛んだったようですが、中には途中でけがや病気、その他の原因で亡くなる人も出てきます。中国では、葬式はできるかぎり故郷で執り行うものなので、異郷で客死した人の遺体は、頑丈な棺に入れて故郷まで運ぶのですが、貴州や雲南のような山岳地帯では、棺を担いで運べるような道はなかなかありません。
しかし、遺体をそのまま異郷に置いておいたのでは、きちんと葬式を挙げることもできません。そこで、遺体運搬を請け負う道士様の出番、というわけです。彼らが遺体に術をかけると、遺体は立ち上がり、道士の後をついて歩くようになります。あとは、途中で術が解けないように注意しつつ、遺体とともに故郷まで、てくてく歩いて行くわけです。これは清朝末期の人、徐珂(じょか)の奇談集『清稗類鈔(しんはいるいしょう)』の「方伎類」に見える話で、「送屍術」と呼ばれています。
…この術は、一人が前で先導し、一人は手に水を入れた椀を持って後につき〔水の中にはお札を入れておかなければならない〕、水が傾いたりこぼれたりしなければ、遺体は倒れない。死体は生者と区別つかないが、しゃべることはできず、歩き方も生者とは少し違う。人が歩けば歩き、人が止まれば止まり、二人の歩みにのみ従う。夕方になり宿に泊まる時に、宿の主人が見れば、死体送りの客だとすぐわかるので、必ずもう一部屋用意して泊まらせる〔このような死体送りの旅行者は、いつでも街道を行き来しており、どこの宿屋でも、それぞれ専用に一部屋を用意してこれらの客を泊める〕。二人は床で眠り、死体は入り口の脇に立っている。湘のことわざに「三人で泊まり、二人が飯を食う」というとおりである。…
街道沿いの宿屋も、きちんと心得ているあたり、こういう遺体運搬法がポピュラーだった(?)ことをうかがわせます。見方を変えれば、このような遺体運搬法が考案されたのは、どこで死んでも、故郷に葬られたい、という人々の強い願望によるものだ、ともいえましょう。
なので、いくらほっといたら悪さするかもしれないとはいえ、鍋なんぞに封印してはいけません。
しかし現代人は、この遺体運搬法にも、なんとか合理的な説明をつけようとします。なんだか無粋な気もしますが、科学的精神の発露ともいえましょう。台湾と大陸で、それぞれ遺体運搬法についての解釈が生み出されました。まずは大陸から。2006年7月17日放映の「走近科学(科学に近づこう、ぐらいの意味でしょう)」という科学啓蒙番組で、この遺体運搬法の種明かしをしております。その方法は…
@死体運びの親方が死体の頭、手、足を切り取り、胴体は処分する
Aわらや木の皮で精巧な胴体を作り、頭、手、足を取り付ける
B運ぶときには弟子が死体を背負って運ぶ
…弟子の人の苦労がしのばれますが。そこまでして、遺体を遺体のまま(かなり改造してますが)運ばなければならないのですね。これが日本だと、火葬して骨壺を持ち運べばいいのですが。
一方台湾では、なんと図入りで遺体運搬法の現代的解釈が創られました。複数のブログで紹介されている、「標準電子報・怪力乱神online」なるメディア(詳細は不明)によれば、以下の通り。(なぜか空白があいてしまいますが、少しスクロールしていただきたく)
…竹竿に腕を括り付け、前後で担いで運ぶため、竹竿がしなって遺体が飛び跳ねるように動く、という合理的解釈がいい味を出しています。これなら山道でも大丈夫!(違)
というわけで、(おもに私のサボりで)長々とおつきあいくださり、ありがとうございます。
近日中に、また別な講座の紹介をさせていただきます。さて次のテーマは一体何か、それは次回の講釈をお待ちあれ(いつだ)。
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